VitaとPSPのマルチ展開の問題点
最近は聞かなくなったけど、発売した直後は「PSVitaはPSP2じゃないのか!」とか、「PSP2出せよ!」「互換性無いのかよ!」とかそんな感じの話もあちこちで見た。気がする。
特に「互換性」の部分は「解釈によってはあるし、解釈によっては無い」になるし、(互換性があるなら)「PSP2じゃないのか」の部分については、確かに呼びにくい名前にはなったけど、実際に使ってみると「これはPSPじゃないな」という感じの印象を受ける。これは、PSP2ではない。
デザインがPSPを継承しているという意味で、「同じだろう!」とか「後継機なんだろう」という誤解を生んでしまっている気がしないでもない。
ま、この段階での結論としては「Vitaは全く持って紛らわしいったらありゃしない!」なんだけど。
で、それはそれとしてタイトルの件。
「VitaとPSPのマルチ展開の問題点」というのを、自分なりに考えていたので、それを書いてみることにする。
ここでいう「マルチ展開」とは、
「PSPとVitaで同一タイトルを発売し、アドホックまたはWi-Fi接続により同時にプレイ、またはセーブデータの互換・共通化による移行可能な展開」
を指す。PS3だとか話を広げるといろいろ出てくるんだろうけど、あくまでも「PSPとVita」に限って話をする。
もちろん、ここから先のまとめは私の誤解によって、若干実態と異なる部分があるかもしれない。その点はご了承いただきたい。
VitaはPSPと互換性があるのか?代わりに買ってもいいのか?
ある意味、発売から半年たった今になって書くような内容じゃないんだけど、あえて正面に捉えてまとめてみると、互換性がある部分とない部分があるので、誤解が生じているという話だ。
先に、この質問について書いておくと、
という感じ。どうにもどっちつかずな説明しか出来ない。
PSPのゲームタイトルについては、全てではないものの既にかなりの数がVita互換タイトルとしてダウンロード可能になっている。最近発売されている新規タイトルもまた、ダウンロード版同時発売となってVitaで動くことが確認されている互換タイトルであることも増えてきた。そういう意味で互換は進んでいるんだけど、UMDパスポートという存在がこの辺りを余計ややこしくしている。
一応、これらを整理すると、
PSPタイトルのVita利用可否
DL版有無 Vita互換 UMD版所有 UMDパス
ポート対応Vita可否 備考 販売あり 確認済み 所有済み あり ○ UMDパス版の購入 数百円~(※1) 〃 〃 〃 なし ○ DL版の購入(※2) 〃 〃 未所有 - ○ DL版の購入(※2) 〃 未確認 - - △ 不可(※3) 体験版など 販売無し - - - × 不可
- ※1 UMDパスポートの値段はゲームメーカー側が決めるため、数百円から1000円を超えるものまである
- ※2 対応している場合は基本的に Vita の PSStore から直接ダウンロードできる
- ※3 対応していないが、PS3でダウンロードしVitaに転送すれば動く場合もあるらしい
こんな感じになっている。
既にUMD版を沢山持っている人ほど、Vitaに買い買える意味がなく、UMD版を持っていない人ほどVitaを買って損をしないという。
ちなみに、ソニーの公式サイトの「ゲームソフト検索」でタイトル数を数えると、本日現在以下の様なタイトル数になっている。
PS Vita/PSPタイトル対応状況 (2012/5/30現在)
- PSPタイトル数: 3,416件 (UMD版/DL版別カウント)
- 内、ダウンロード版: 1,472件
- 内、PlayStation Vita互換タイトル: 696件
- 内、UMD Passport対応タイトル: 343件
UMD版とダウンロード版は別々にカウントされているので注意。
その上で、ダウンロード版の内のVita互換という確認済みのタイトルが半分ぐらいで、UMDパスポートに対応しているのはさらに半分ぐらいで。そういう意味では「まだまだ」とか「互換性ない」といえなくも無いというか。
「今後も対応していく」との事なので、ダウンロード版が無い古いタイトルについては厳しいかもしれないが、既にダウンロード版があるタイトルやこれから発売されるPSPタイトルについては期待しててもいいかも知れない。
これからVitaを買おうと思っている人、PSPから買い換えようと思っている人の目安になれば。
VitaはPSP2じゃないの?
まず、ハッキリいってしまえば「見た目は似ているけど全く別物」である。
これについては、使えば使うほど判る。別物だ。あくまでも、別物の上で「PSPのタイトルが遊べる」という程度のものだ。
なので、「PlayStation Portable 2」という名前にしなかったのは、個人的には正解だと思っている。
いや、前段で書いた互換性の部分を重視して「これらが動く前提でPSP2にした方がよかっただろう!」という選択肢もあっただろうとは思う。でも、それは出来なかったんだと思う。それをすると、結局新しいことが出来なくなる。新しいことをする為には、どこかで古い部分は捨てなくちゃならない。
今回については、ハードウェアとしての見た目のデザインは踏襲したものの、ソフトウェアについては古い部分として一旦捨てる選択をしたんだと思う。
Vitaになって、右アナログスティックが追加されたとか、タッチパネルが追加されたとか。画面が液晶から有機ELに変わってサイズが大きくなったとか、カメラが付いたとか。
今までに無かったものがいろいろ追加されたけど、そういうのは正直以前のPSPのシステムソフトウェアに機能を追加する形での対応も出来たと思う。だけど、そういう追加部分はたぶんどうでもいい話で、やっぱり重要だったのは「セキュリティー」とか「ネットワーク」の部分だったんだと思う。それをする為には、かなりシステムの深い部分から手を入れなくちゃいけないから、今までの部分は大きく捨てざるを得なかったというか。
使っていると、全く別モンだよな?これ。という事が良くわかる。
そういう意味で、「VitaはVitaであり、PSP2ではない」と思っている。
無論、「そういう事情があったとしてもそんなの関係ないから名前は "PSP2" でよかったんじゃない?判りやすいし、その方が売れたんじゃない?」という意見もあると思う。確かにそういう判断も出来たと思うけど、前段の通りの互換状況(発売当時はもっと少なかった)を考えると、名前が同じだと互換性を勘違いして買う人がいてもっとクレームとかパニックになっていた・・・という気がする。
そういう意味で「名前を変えることで互換性が保障されていないことを暗に公式に認めていた」という話かも知れない。
そこは事実だと思うし。事実、全部に互換があるワケじゃないんだから。
Vita通信ライブラリのPSPとの互換は無し?
Vitaの新作ゲームをチェックしていると、気付くことがある。
「あれ?PS3とのクロスプラットフォームは結構発表があるけど、PSPとはないよね?」
と。実際そうなのだ。今のところ、VitaはPSPと仲が良くなかったりする。言い方へんだけど。
この辺りは実際に開発している人ではないので、憶測にしかならないんだけど、Vitaのネットワーク関連の開発ライブラリはPSPと全く別物なんだろうな?と思う。当然、PSPのアプリをVitaで動かす分には、Vita上で動くPSPエミュレータがPSPとして動くのでPSPとの通信も問題なく出来るんだけど、VitaのゲームでPSPと接続しようとすると、出来ないんだろうと思う。
つまり。これの意味するところは、
「PSPとVitaを直接繋ぐクロスプラットフォームのタイトルは展開出来ない」
ということなんだろうなー、と。
次の話に繋がる。
Vitaはアドパ(PS3経由)に対応していない
追記(11/8)
2012/10/18に発売された「ダンボール戦機W」については、Vita初となるアドホックパーティーに対応しています。
ただし、Vitaの公式サイトのQ&Aでは現時点においても「未対応」となっておりますので、タイトル毎に異なると思いますので、現時点で発売済みはもちろん、今後発売予定のタイトルについてもアドパ対応かどうかはご確認ください。
PS Vitaゲームソフト : 対応していません。
Vitaが発売された直後、いや今でもよく誤解される話。「Vitaはアドホック通信が出来ない?」。
出来ます。そして、そういう人は「アドホックの略語がアドパ」と思い違いをしていることが多い様な気がする。
「アドパは "アドホックパーティー" の略であり、アドホック(通信)とは違うもの」
である。ただし、アドホックパーティーで使われる通信は「アドホック通信」なので、全く別物といえない事情があるのが紛らわしい限りで。
詳しくはこの辺りで。
さて、前段で書いた通り、VitaのゲームはPSPと全く別物である。したがって、PS3と繋ぎオンライン対戦が出来るアドホックパーティーは未対応である。
ただし、VitaでPSPのゲームを起動している場合はPSPとして通信しているので、今まで通りアドホックパーティーは利用できる。
ここも誤解しやすいポイント。
「Vitaはアドホックパーティーに対応していない」は確かにその通りなんだけど、「PSPのゲームで遊ぶ場合は除く」が付く。
また、
「Vitaはアドホック通信はできるが、Vita間のみでありPSPとのアドホック通信についてはPSPのゲームで遊ぶ場合に限る」
がある。本当に出来ないのか?は、まだ不明な部分が多いんだけど、VitaとPSPではアドホック通信の仕方が(タイトルにもよるんだろうけど)大分違うらしい。
そもそもVita自体がPS3を経由する必要が無く、単独でオンラインゲームに参加できる設計になっている為、PSPとは背景となる事情が違う。アドホックパーティーみたいな環境をソニー側が用意する必要がないという事なのかも知れない。実際、現在あるVitaタイトルのオンラインゲームは、全てメーカー側が独自にサーバーを立ててサービスを提供している。アカウントの認証としてPSNサーバへの接続は行なわれることはあるけれども。
そういう意味で、「大型タイトル」をVitaで出そうと思った場合、メーカー側はそれだけの規模のサーバーを用意しなくてはならないため、現実的に難しいという事情はあると思われる。Vitaの販売台数が今後増えていけば、それだけメーカー側のサーバー維持の負担も増えるという問題も出てくるだろう。
ただ、ソニー側もそこらへんの事情を全く検討していないわけではないみたいで、将来的に何らかの対応があるかも知れない。
前タイトルのデータ引継ぎ・連携は不可
Vitaはセキュリティーが厳しく、ゲーム間でセーブデータのやり取りが出来ないっぽい。
なので、Vita間の別々のタイトルのセーブデータはもちろん、PSPのゲームのセーブデータをVitaのゲームが読み込んだりが出来ないって事になる。
将来的にPSP版のゲームタイトルがVitaで新作として登場したとしても、PSPの時からのセーブデータの引継ぎが出来ないと思われる。Vitaで続編タイトルが出た場合でも同じ。なんか残念。
とはいえ、データを引き継ぐ全く方法がないわけではなく、「クラウドセーブ」とか「トランスファリング」と呼ばれる、セーブデータをネットワーク上のサーバにコピーする方法が最も現実的な方法として考えられ、たぶんそういう方向になると思う。
と、気軽に書いたものの現時点ではそれらの保存先も各メーカー側が用意する必要があるし、PSPのセーブデータをコピーするにはPSPから行なわなくてはならないので、そういう機能、ツールなどを別途配布するなどの手間も必要になってしまう。実現には結構高い壁がある。
将来的にVitaもクラウドセーブに対応するであろう事を考えると、もう少しこの辺りは柔軟になってくるんじゃないかな?とは思っているが、それはまだ少し先の話。
関連記事 (追記:2013/1/25)
Ver.1.80で対応した「セーブデータ取り込み機能」がその可能性があるので、一応考察として追記しておきます。
まとめ
なんか、自分で書いていて風呂敷を広げすぎた感があるんだけど、今のところの自分の感覚的なところのまとめ。
極論というかある意味暴言でもあるんだけど、
「PSPとVita間で通信が可能な同一タイトルが発売されることは無い(少ない)」
と思っている。アドホック通信の場合でも、Wi-Fi通信の場合でも。
Vitaのアドホック通信がPSPと異なっている関係上、アドホック通信での相互プレイは望めない。逆にPSPもWi-Fi通信はできるものの、それに対応したゲームは現時点で殆ど無く、今後も出る可能性は少ないと思っている。
もちろん、VitaでもPSPとして起動している場合は相互に通信できることから、Vita側のアプリがPSP側に合わせる形であれば、出来ないでははいと思っているが、ここまでそういう話が出てきていないことから、実はそれはVitaの標準環境ではサポートされていないか、利用が困難な何らかの理由があるのかも知れない。
したがって、「VitaとPSPのクロスプレイは(出来ないことはないだろうが)難しい」と思っている。
Vitaを買う前と買ったときは「きっとできる!」と思っていたんだけど。今はそう思っている。
だけど、既にVitaとPS3はクロスプレイなタイトルが結構発表されているし、そこにXBOX360も入っている。まだないけれども、PCやスマホなども繋がる可能性は高い。
そういう意味でもVitaはPSPの互換機でも後継機でもない。どちらかといえば、PS3やPCなどに近い形で通信や拡張ができるように設計されている、こちらの方の姉妹機と言えるだろう。
「PSPからVitaに移行が進んでいない」とか「PSPとVitaの互換タイトルを出せ」という話もチラホラ聞こえてきたりもするんだけど、そもそも別物だから移行しにくいと思うし、互換のタイトルも出せないんだと思う。
たぶん、きっと。