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Wi-Fiの「位置情報サービス」

先の記事で「Wi-Fiの位置情報サービス」的な話を書いた。
まず、最初にこのエントリーのポイントを挙げておくと、

『一般的にGPSと呼ばれているものは、GPSではないものがほとんどだ』

ということだ。断定口調で書いているが、あえてそういう言い方にしている。

では、その説明をしようと思う。

まず、言葉の定義をハッキリさせるため、「GPSって何?」からはじめたいと思う。

GPSってなに?

困ったときの Wikipedia。早速調べてみよう。

グローバル・ポジショニング・システム

グローバル・ポジショニング・システム (Global Positioning System (GPS),全地球測位システム)とは、米国によって運用される衛星測位システム(地球上の現在位置を測定するためのシステムのこと)を指す。
ロラン-C (Loran-C: Long Range Navigation C) システムなどの後継にあたる。
なお、GPS受信機(GPSR)を指してGPSと呼ぶ例も見られる。

「米国によって」「衛星測位システム」ということが重要だ。この場合の米国も「アメリカにある企業」ではなく「アメリカの政府」だということも重要。本来は、営利目的ではないということ。
ただ、引用の最後の分が本稿の説明としては重要だ。
「GPS受信機を指してGPSと呼ぶ例も見られる」
いや、まず現在。この例がほとんどであるということだ。GPS受信機はかなり小型ではあるものの、受信感度はアンテナ形状などによって変わり、また高層ビルのある都市部や、屋内では利用できない。この為、実際は複数の測位法を用いていて、それらを全部総称して「GPS」と呼んでしまっているということだ。

でも、携帯電話会社はみんな「GPS」って呼んでるよ?

確かに呼んでいますが、実は携帯電話で現在利用されているGPSには本来のGPSとは異なる名前が付いています。
「A-GPS」(Assisted Global Positioning System)
判りやすい説明が別サイトにありましたので、こちらを見てもらえればと思います。

第456回:A-GPS とは - ケータイWatch

A-GPS端末では、携帯電話の電波の届いているエリアであれば、地球上のどこでも市街地で5~10m程度、建物内で20m程度以内の誤差で、現在地を確認できます。携帯電話では、多くの機種でA-GPSを利用した位置測位が利用できるようになっていて、いろいろなサービスで位置情報を活用できます。
(中略)
 ただ、A-GPSにも、その仕組み上、デメリットが存在します。たとえば、携帯電話のデータ通信の仕組みを使うため、携帯電話のサービスエリア外(圏外)では利用できません。また測位をする際には、携帯電話の通信料が発生することになります。

実際にはGPSの機能も使いつつ・・・なので、ほとんどの携帯電話会社は「GPS」と呼んでいますが、実際は「携帯電話のデータ通信を使う」というサービスであることは、知っておいた方が良い話です。そして、それは「A-GPS」という別の機能。*1

少し、Wi-Fiと離れてしまいましたが、Vitaの3G版もこれと基本的には同じ仕組みを使っていますが、圏外でもGPS単独で利用できるようになっているようです。*2

GPSが使えないときのWi-Fi位置情報サービス

Vitaで利用しているサービスは、「skyhook Wi-Fi Positioning System」といい、詳しいことは Wikipedia を読んでもらえば判りますが、発足とかそういう話はVitaとは直接関係ありません。

スカイフック・ワイアレス

Skyhook Wireless (元Quarterscope)は、アメリカ合衆国の企業である。2003年にボストンで設立された。

もともとは、人工衛星を使うGPSのアンテナが無い携帯端末で、現在位置を取得するのに無線LANを使ったらどうか?ということからの発想です。世界中にある無線LANのアクセスポイントの情報を収集し、それぞれに位置情報を付加、データベース化することで、人工衛星の代わりにしようとしたサービスです。
この会社以外でも Google社が Google MAPSストリートビューの写真撮影の為に車を走らせながら、近隣の無線LANの情報を取得していたというニュースが話題になったことがあります。
また、初代iPhone以降Apple製品(iPod touchなど)でもGPS受信機が無かったため、この Skyhook が採用・導入されていて位置情報サービスが利用できる形でしたが、一昨年の iPad 以降はApple独自で構築したWi-Fi位置情報サービスでの提供としているそうだ。

GPSとWi-Fiと位置情報サービスで何が違うの?

一応ここまで説明してきたが、ここで改めてまとめると、違いはこんな感じになる。

GPSによる位置推定

地球上を回っている人工衛星を複数捕捉し、そこから送られてくる時間情報を比較する事で、各衛星の時間のズレから距離を計算し、計算結果として自分の位置を測位する。衛星数は約30個。内、常時4~8個程を捕捉する前提。
人工衛星は常に移動しているが、現在位置は人工衛星側から時間の信号と一緒に送られてくる。

メリット
世界中で使える。通信環境が不要。
デメリット
屋内、都市部では利用が出来ない。GPS受信機が必要。

A-GPSによる位置推定

上記GPSの技術を使うが、人工衛星の現在位置は携帯電話会社の基地局が把握しており、携帯電話が接続している近隣基地局の情報を元に、人工衛星の位置情報をデータ通信で携帯電話側に送信する。
携帯電話は、この位置情報を元に人工衛星から送られてくる時間情報のみを利用し、電波が弱くなる屋内でも利用可能としている。

メリット
GPSより位置特定が速く、屋内でも使える。
デメリット
3G回線契約が必要。通信キャリアに依存する。
Wi-Fiによる位置推定

地上に設置してある無線アクセスポイントを複数捕捉し、それぞれの電波強度を比較する事で各アクセスポイントとの距離を推定し、計算結果として自分の位置を測位する。無線アクセスポイント数は無数。
アクセスポイントの位置は、事前に位置情報サービス会社がデータベース化しており、このアクセスポイント名(実際はMACアドレス)をサービス会社のサーバに送る事で、それぞれの位置が送られてくる。

メリット
GPS受信機が不要。屋内利用可能。通信キャリア契約不要。
デメリット
通信環境が必要。サポートエリアが一部都市部に限られる。

である。
改めて、Wi-Fi版で位置情報を把握するのに、ネットワーク接続が必要なワケがわかっていただけたろうか。

まとめ

この辺りの話。GPSに関する話は、かなり身近にはなってきているものの、その裏側の仕組みは利用者の気付かない所で構築されていたりする。便利だが、使えなくなったときに、その理由がわからない・・・という事になる。
特にVitaの場合、携帯電話やiPhoneiPad2Android端末などのスマートフォン、タブレットPCと基本的には利用技術は同じにもかかわらず、「ゲーム機」という位置付けであるため、この辺りを詳しく知らない人の利用は増えている可能性は高い。大人だから知っているとかそういう事でもない訳で、そもそもどこかで習うような話でもないし。普段の生活をする上で、いちいち覚えなくても使えてる、使えないと困るという感覚の人の方が多いんじゃないかな。
なので、なんとなくまとめてみた。

無論、私のまとめなど素人のにわか知識なので、説明の詳しい部分は間違っているかもしれない。その程度の参考情報として誰かの参考になれば程度の話として。

*1:Apple社のiPad2でもGPSではなくA-GPSとして詳細仕様に記載があります。⇒http://www.apple.com/jp/ipad/specs/

*2:3G契約が切れてもGPS機能を利用できるようにするためでしょう。