みんなの為の?トロフィー機能
据え置き機はずいぶん前からあるけど、トロフィーの実装と言う意味では「恥ずかしいゲームが出来ないから隠したい」「余り面白くなかったから殆ど遊ばなかったゲームは消したい」なんて話もあって賛否分かれるところでもある。
そもそも「トロフィーって何の役に立つの?」とは、一旦は誰もが思う話で、よく「自己満足だけ」なんて言われるが、実はそうでもない。メーカーにとっては貴重なアクティブなデータだったりする。
実際に使っているのかはともかくとして。
今回はVitaに限らないそんな話。
ゲームのプレイ時間は有限だ!
ゲームを買う時に必ず出る質問。
「そのゲーム、クリアまで何時間ぐらい遊べますか?」
と。
イヤイヤイヤ。だって、ゲームを遊ぶ時間なんて各個人のプレイスタイルや生活環境で違うんだから「そんなの人それぞれじゃない?」ってのが大雑把な答えなんだけど、それでも必ず聞かれる訳で。
ゲーム雑誌なんかでも目安として書かれていたり、インタビューなんかでも質問されていたり。
まぁ、消費者的にはもちろん無視できない話。
お金を払う以上は永く沢山遊びたい!ってのが大元としてあろワケで、値段を時間で割れば「一時間辺りの費用」みたいなものも計算できるから、一度に何本もゲームを買えないし遊べない人にとっては大事な問題で、数値指標としてゲームを比較できるひとつの目安。
出来るだけこの費用が小さければ小さいほど得!みたいな話があるからだと思われ。
人生。無尽蔵にお金と時間がある訳じゃないから、それは至極当然のこと。結局は合う合わないの人それぞれなんだけど。
シリーズとボリュームのジレンマ
もっとも、この話はメーカーにとっては頭が痛い話。
無限じゃない時間を消費してまで永く遊んで貰えることは、そのゲームのファンが生まれたことであり、ゲームを作るクリエイターとしては嬉しいことだろう。だとしても、仕事、ビジネス、会社として考えると話がややこしくなる。
そのファンの人がそのゲームだけで満足して延々と遊び続けていたならば、会社としては続かなくなってしまうし、先細りにしかならない。
だからひとつのゲームのファンだけではなく、いろんなゲームでファンを増やさなければならない。安定した会社運営の為には、他のゲームも作って誰かに買ってくれなければ経営がなりたたないので。
勿論、特定のファンの為に人気シリーズとして、次々に続編を出すことで運営するやり方もある。そういう努力も大事だ。それならファンも続編を買ってくれるだろうし。だけど、シリーズは続けば続く程にファンのクオリティーに対する目は厳しくなる。
特にボリュームは減らせない。減らすとガッカリ度が増すからで。
ならボリュームを増やせばいいのか?といえば、それを作るのは時間的にも費用的にも大変になるし、ボリュームが増えれば増えるほどにそれをプレイする時間が増えるわけで、そのファンの人達は他のゲームを買ってくれなくなることで満足度の上昇と反比例して収入が減ることにもなりかねない。
作る側にとっても相当なジレンマなワケで。
プレイ時間とヤリコミ要素の分離
いつの頃からか、プレイ時間の質問とセットで聞かれるのが「このゲームはヤリコミ要素はありますか?」という質問。
この質問自体は前段の「永く遊んでお得したい!」という心理的なものと本質的には同じなので、大事な部分だし、メーカーとしても無視できない部分。
なので、ずいぶん前から「プレイ時間」「ヤリコミ要素」は別に語られていて、時間も別々に計算されている。
周回プレイが前提のゲームもあるし、そういう場合はプレイ時間は短くてもヤリコミ要素で満足度が上がることもあるわけで、一概にこのプレイ時間だけで評価は出来なくなってきた。
それこそヤリコミ要素なんてやる人によって大きく変わるもので、平気で1,000時間も使う人がいるかも知れないし、そこまでやらないと揃わないヤリコミ要素で、いったいどれ程の人が満足するのか?という。
そこまでやりこむ極一部の人しか到達できない目標に、万人のためのエンターテイメントであるゲームはそれを目指すものなのか?と。「家庭用ゲーム機の市場」を「コンシューマー市場」って、呼ぶ訳で、その意味は「消費者」。過剰なヤリコミ要素は消費の阻害になる。
みんながみんなヤリコミをする訳じゃないし、それをしないと満足出来ないなら、そもそもその人はリピートしてくれなくなる。そのバランスってすごい難しい。
開始トロフィーと進捗トロフィー
最近のゲームにはゲームを開始した直後や、キャラクターを作ったあとの導入を見終わった後にピロン♪と鳴って獲得するトロフィーがある。
「それ、トロフィーとして意味あるの?」的な不可解なトロフィー。
個人的に「開始トロフィー」と呼んでいるものだ。
「簡単に!」処か、「誰でも必ずとれる」ものなワケで、オシャレく言えば「ウェルカムトロフィー」でも言いかもしれない。
そして、ゲームを進めるとステージや章立てされた順番にピロン♪と鳴って取れるトロフィーもある。こちらもヤリコミ要素と関係なく誰でも取れる。
個人的には「進捗トロフィー」と読んでるけど、プロジェクト的には「マイルストーン(トロフィー)」と呼んだ方がカッコいいかも知れない。
そんな誰でも取れるトロフィーだが、誰でもとれるからこそこの2つはとても重要なのだ。
プレイ時間の把握と脱落箇所の把握と
面白いゲームであれば、寝る間も惜しんで一気に最後まで遊んでしまう!という人もいるだろうし、じっくり惜しみながら遊ぶ人もいる。
そういう意味では、「トロフィーの取得時間は単純には意味はない」と言える。だが、トロフィーが記録されることには大事なポイントが2つある。
- やたらと時間がかかった部分は無かったか
- 途中で諦めたりやめてしまっている人はどれだけいるのか
全部のトロフィーを取った証となるプラチナトロフィーはともかく、ストーリーでとれるトロフィーは誰もが取れるわけで、ゲームを作るメーカーからしたら「最後まで取って(一度は通しで遊んで)欲しい」訳で。
望むべくはストーリートロフィーの取得率は「100%!」な訳で。
しかし、そんなストーリートロフィーが極端に取得率が低い箇所が有れば、それは脱落した人が多かったと言うこと。
つまり、難しかったか、進めるのを諦めるほどにつまらなかったと言うこと。
メーカーにとっては、取得率の低さは非常にシビアな現実。だが、そのデータはとても貴重なものでもある。
これが低ければ、The Best版を作ったところで最後まで遊べなかった人の評判で売れるかも分からなくなるし、クリアしていない人がシリーズの続編を作っても買ってくれるワケが無い訳で、むしろ貴重な改善すべきポイント。ヤリコミ要素がどうとかいってる場合じゃなくて。
その挫折した人が多かった箇所は、次の作品に繋げる問題点として見直すこともできるし、調整可能な部分ならアップデートで修正と言うこともできる。
アップデートは、不具合対応や機能追加だけじゃない。バランス調整も大事な部分。そのバランスも、強力なアイテムや能力の調整だけでなく、みんなが最後までストーリーを進められるようにするためのものでもあるのだ。
勿論、ヤリコミ要素のトロフィーも、取得率が極端に低かったり、逆に高かったりしたら調整の余地が有るかもしれないわけで。
まとめ
個人的には「各個人のトロフィーの公開とか非公開については、正直どっちでもいい」という話なんだけど、トロフィー情報そのものについては、メーカー側の努力次第で非常に重要な情報になりうるものであり、その努力によっては私たちゲームを楽しむ消費者側、ユーザーとしては満足度の高いゲームを楽しむことが出来ることに繋がる貴重なものと考えている。
昔はゲームのパッケージ内にアンケートはがきが入っていたが、そもそも出す人なんてかなり少なくて、メーカーに届く声は貴重ではあるものの、声を出さない人の声、よく言われる「サイレント・マジョリティー」な人たちの声は決して届かなかった。
インターネットの普及でハガキがオンラインのアンケートになったり、ベータ版などで幅広く意見を募集したりも出来るようになったが、それでもやはりそれも声を出す人だけの話。ハガキよりは増えたかも知れないけれども、それは結局は偏った意見でしかなくて。
そういう意味でトロフィー機能はユーザー側が声を出す必要は無いワケで「(一種の)自動アンケートシステム」だ。上記のような話だけに限るのであれば、「特定個人の進捗状況」には全く意味がなく、全プレイヤーの総数としての割合が大事な話で。そういう点では個人情報的な側面で評価するものではない。
無論、取得日時が記録されているという意味で、トロフィーも個人情報だ!とすることは出来るので、その取り扱いという意味では決しておろそかにしていい話ではない。だから公開、非公開については議論があることは大事だとも思っている。
でも、同じトロフィーでも「みんなの為のトロフィー機能」という側面があると言うことも無視は出来ない話で。*1 *2
冒頭にも書いたけど、
「実際に使っているのかはともかくとして。」
の話だけど。
- 追記(2013/8/6)
- Ver.2.60から「トロフィーの個別非表示」が可能になった。削除ではないのか?という意見はあるが、あくまでも「非表示」これについては個人的にはこの記事に書いた通りで「各個人間では非表示」となるが、「メーカー側への提供情報としては必要となる為削除にはならない」んだと考えている。そういう意味で、今後も「削除」については当面行われる予定は無いんじゃないかな?と考えている。
- 追記(2014/10/6)
- Ver.3.30から「トロフィーのレア度表示」が可能になった。各ゲームのそのトロフィーの取得率により保持者がどれぐらいの割合なのかがVitaのトロフィーからでも参照できるようになった。技術的に難しいのか、時間的に難しいのか、そもそも取得するほど魅力が無いのかとか、取得率の低さは原因が様々だが、それでもそのトロフィーの難易度がわかるようになった事で、ゲームを遊ぶ人が「自分はどこまで頑張るか」の目安が出るようになったといえる。単に、ブロンズだ、シルバーだ、ゴールドだなどのメーカー側が決めたレベルとは別に。これも、一種の「みんなの為のトロフィー昨日」と言えるんじゃないかと思う。