メーカによるセーブデータのクラウド管理
先日、こんな記事を書いた。
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それから一月半。正式に発表があった。アップデートは6月21日の予定。
ラグナロクオデッセイ アップデート情報
- セーブデータのバックアップ/リストア機能の実装
- オンラインストレージによる、セーブデータのバックアップ/リストア機能を実装しました。
との事。通常のメモリカードへのセーブとは別に、何らかのメニューでメーカ側が用意するオンラインストレージにデータをコピー出来る機能という事らしい。
いいよね。それ。
特に、Vitaの場合は「Vitaカード版でVitaカードにセーブデータを保存するタイプ」の場合は、ユーザ側がバックアップを取る方法が無く、将来的に PlayStation Plus での対応が想定されているものの、正式には未だ発表が無いわけで。
でも、ソニーのサービスとしてのオンラインストレージへのバックアップ、クラウドへの保存と、ゲームのメーカー側がする同種のサービスでは全く持って意味が違う。
その辺りのことを一応まとめておきたい。
ネットワークバックアップの言葉の定義
なんか、言葉が乱立しているので、ここでまとめておく。
- クラウドバックアップ
- インターネット上のクラウドサーバ上に保存する形でのデータのバックアップ。広義としてのオンラインバックアップに含まれる。
- オンラインバックアップ
- インターネット上のサーバに保存する形でのデータのバックアップの総称。
- ネットワークバックアップ
- ゲーム機本体以外のネットワーク上にある外部ストレージに保存する形でのデータのバックアップ。オンラインバックアップが含まれることもあるが、自宅内のストレージなどインターネット上のサービスとは限らない。
という感じだろうか。
ただ、これだとやはりあいまいなので、ここから先は以下の通りの定義とする。
- クラウドバックアップ
- ゲーム機メーカーがシステムソフトウェアとして提供するインターネットバックアップサービス。Vitaの場合はソニーであり、PlayStation Plus などを想定とする。ゲームの種類に限らず利用可能なものであり、ゲーム側での対応は不要。
- オンラインバックアップ
- ゲームメーカーが提供するインターネットバックアップサービス。あくまでもゲームメーカーのサービスとなる為、ゲーム側での対応が必要となる。ゲームメーカー側でのサーバの準備、維持が必要。
- ネットワークバックアップ
- インターネット上ではなく自宅環境、または個人が用意する形でのネットワーク上にあるゲーム機以外でのバックアップ。ゲーム側での対応は不要だが、システムソフトウェア側での対応が必要。また、その為のストレージの準備も必要。
- ケーブルバックアップ
- 現在利用可能なPCまたはPS3に対するデータのバックアップ。ゲームの種類には依存しないが、Vitaの場合は保存先がメモリカード上である必要がある。また接続の為にはコンテンツ管理アシスタントの利用が必要。
の4つとする。最後の1つはオンラインではないが、違いを表すために定義した。
現時点で、Vitaのシステムとしてはこの4つの内の最後の1つ。「ケーブルバックアップ」しか準備されていない。
そして、システムが対応する必要が無くゲーム側が対応する形として「オンラインバックアップ」が既にいくつか登場していて、今回のラグナロクオデッセイもまたその1つとなったという所だ。
クラウドバックアップのメリットとデメリット
ゲーム機メーカーであるソニーが用意することを期待されている「クラウドバックアップ」。
まだ、公式には正式な発表が無いものの、それっぽいことは噂レベルでポロポロと聞こえてきている。
最も、Vitaでは実現されていないけで、既にPS3では実現されており、やらない理由はなんなんだ?ぐらいの感じな所になっている。
だが、利用者側は結構問題がある。今のところ、このまま行けばこれは「有料サービスになる」という事だ。
その辺りを利用者側のメリット/デメリットという形で書いておく。
クラウドバックアップのメリット/デメリット
メリット
- ゲームの種類に関係なくバックアップが取れる
- アカウント単位でのバックアップが可能となる為、ゲーム機の紛失や故障でもデータは残る
- 利用状況などの管理をパソコンなどから行なう事も可能
- システム側での対応となる為、タイマーなどによる定期的なバックアップも可能
- 毎日夜3時のスリープ中とか、毎週日曜日の5時とか
- 更新があったものだけバックアップなども可能
- 長期的なサービスの維持が期待できる
- ゲーム機としてのサービス提供となる為
- ゲームの保存データに限らず、写真や動画なども保存できる
デメリット
- 基本有料(たぶん月額利用料の発生)
- Vitaカードへの保存の場合は対応できない可能性がある
- 現時点では外部への書き出しが許可されていないと思われるため
- ゲーム間でデータの引継ぎなどとしては利用できない(と思われる)
- クロスプラットフォームな利用は難しい
- メンテナンスでの利用可否の影響を受けやすい
有料になりそうだという事以外では、大きなデメリットは無いかもしれない。
ただ、ゲームのセーブデータはゲーム単位で管理されてしまうため、シリーズ物のゲームがあった場合に、データの引継ぎなどには多分利用は出来ない。
でも、有料で使いたい!という人はどれほどいるだろうか。バックアップだけであればそれほどいないだろう。他のサービスと合わせてであれば、ついで的な価値は出てくるが、月額などで払うことを考えると、利用は限定的になる可能性のほうが高い。
サービス上の大きな課題店だと思われる。
オンラインバックアップのメリットとデメリット
一方、ゲームメーカー側がゲームとしてバックアップ用のサーバを用意するという方法もあり、既にいくつかのタイトルはこれを採用していて、始まっている所もある。
オンラインバックアップのメリット/デメリット
メリット
- アカウント単位でのバックアップが可能となる為、ゲーム機の紛失や故障でもデータは残る
- Vitaカードでの保存の場合も利用できる
- プログラムとしてデータを送る形になるので、保存形態には依存しない
- ゲーム間でのデータ引継ぎなどとして利用可能
- クロスプラットフォームでの利用も出来る
- オンラインを前提としたオートセーブの設計も可能
デメリット
- 対応しているゲームの種類に限られる
- 利用料金はメーカ側の提供状況により異なる
- 無料の可能性も高いが、有料の可能性も十分にある
- システム的なバックアップは期待できない
- オートセーブでない場合は自身で管理する必要がある
ハッキリ言えば、「クラウドバックアップ」のメリットはデメリットになっており、逆にデメリットがメリットになっているという間逆に位置するサービスと言える。
利用料金については、どれぐらいのユーザ数と期間を想定しているか?というゲームメーカー側の戦略に紐付くものなので何ともいえないが、よほどの大型タイトルやシリーズ物で無い限りは、あまり長期的なサービス提供は期待できないだろう。
だが、逆に言えばシリーズ物などであれば、シリーズを通してデータを利用したり、全く別のプラットフォームでもそのセーブデータを利用されるという事も可能性が出てくる。
そうすれば、遊びの幅が大きく広がる可能性がある。
ネットワークバックアップのメリット/デメリット
パソコンなどでは既に一部の家庭では珍しくもなくなってきたネットワークアタッチストレージ、通称「NAS」。自宅のLAN内に置くストレージで、複数のパソコンなどから写真や動画などを共有する形で置いておけるという使い方が多い。
そんなものに近い形として、今年の夏にソニーからPS Vitaでも接続が可能という形で発売が予定されている "nasne" がある。
今のところ、ゲームのセーブデータが保存できるか?については、全く発表されていないが、少なくとも「動画の再生は出来る」と発表されている。
だが、このnasneはもともとネットワークアタッチストレージ。利用目的としては公式サイトにこう書いてある。
nasneとは?
録画したテレビ番組のほか、画像、音楽などのデータも内蔵ハードディスクと、"ナスネ"に接続した外付けハードディスク*3に保存できます。これらのデータは、ホームネットワーク上にあるDLNA対応機器から再生することもできます。
Vitaの場合でも、写真の撮影は出来る。動画の録画も出来る。それをクラウドバックアップすることもできるが、それでは時間がかかる場合もあるし、そもそも自宅の外にバックアップというのにはプライベートな意味で抵抗がある。
そういう時に、この nasne が対応していれば、家庭内でケーブル接続なしの無線によるバックアップが出来る様になる。
ネットワークバックアップのメリット/デメリット
メリット
- 自宅内のストレージの為、利用料は無料
- ゲームの種類に関係なくバックアップが取れる
- 写真や動画などはパソコンなどの他の機器でも再生・利用が可能
- タイマーなどによる定期的なバックアップも可能
- メンテナンスでの影響を受けない
- ケーブルに縛られないで利用可能
デメリット
- Vitaカードへの保存の場合は対応できない可能性がある
- 現時点では外部への書き出しが許可されていないと思われるため
- ゲーム間でデータの引継ぎなどとしては利用できない(と思われる)
- クロスプラットフォームな利用は難しい
- 専用となるハードウェアの購入が必要
- ケーブルバックアップよりは低速
ほぼ、クラウドバックアップのメリットとデメリットは共通と言えるだろう。その上で、利用料が発生しない安心した利用が出来る。(購入はいるとしても)
そして、ケーブルバックアップより手軽に利用できるメリットも生まれる。
まとめ
既にできることなのでケーブルバックアップのメリットとデメリットは省略したが、そもそもケーブルバックアップは個人的に「最低限のバックアップ手段」だと考えている。パソコンやPS3が絶対に必要か?というと、それはどうなんだろう?と思っているから。
そんな事いうなら、"nasne" だって同じじゃない?と思われるかも知れないが、実際それも大体同じじゃないかな?と思っていたりする。ただ、将来的なことを考えると、PS3やパソコンよりも "nasne" の方がいろんな意味で将来性が有りそうかな?とは思っていたりする。
自分が買うかはまだ決めてないけど。
そういう意味で、クラウドバックアップ、ネットワークバックアップ、ケーブルバックアップは「保存場所が違うだけ」であり、メリットとデメリットの違いはその「保存場所の違い」ぐらいしかない。
一方、「オンラインバックアップ」については、この3つとは全く違う側面を持っている。
今回は利用者側という観点でまとめたものの、メーカ側のメリットはもちろんいろいろあるだろう。
そう考えると、「オンラインバックアップ」というサービスは、今後どんどん増えてくると思うし、むしろそれが新しい遊びの基礎的なものになってくるんだろう。
オンラインゲームやネットワークゲームというゲームの種類とは違う形で。